国際税務ブログ アーカイブ

2018年5月

2018年5月14日

19. 国際相続

昨今のヒト・モノ・カネの国際化の進展に伴い、相続の世界でも国際化が進んでいます。一昔前は資産家の間では、自らの居住地や財産を国外に移転することで日本の相続税対策を行っているようなケースが多く見受けられました。しかし昨今の税制改正により、相続税を回避できる道がどんどん狭められています。
例えば平成25年改正では、従来まで日本国籍を外せば国外財産に対して日本の課税権が及ばなかったものが同改正により国外財産に対しても課税対象とされました。これは相続税対策として、例えば子供をアメリカで出生してアメリカ国籍を取得したうえで海外居住させるようなスキームが当時利用されていたことに対する対抗策でした。
そして平成29年改正では、従来まで親子ともに5年超の海外居住をしていれば国内財産のみについて課税対象とされていたものが、同改正により10年超と期間が延長されました。これも当時(とは言ってもつい最近まで)、シンガポール等へ居住地を移動し、5年間同地で生活することで相続税を軽減できるようなスキームが利用されていたことに対する対抗策と考えられます。5年間の辛抱と思って海外に生活されていた資産家の方々の中には同改正に落胆された方もいるのではないかと思います。
更に、国外財産調書やCRSといった日本の納税者の国外財産に対する当局の監視の目が日々厳しくなってきています。
相続税というのは納税者が亡くなってから親族や後継者に対して譲渡される資産(負債)に対して課される一種の贈与税です。相続税は全ての国で課される税金ではなく、相続税の無い国も多数あります。また日本の相続税率は国際的に見ても高い水準にあります。
上記で述べてきた従来までの相続税対策は、日本の高い相続税制に嫌気がさした日本の資産家が日本という国を捨てて自分及び一族の資産保全を図るという考えが根底にあったように思います。昨今の相続税を巡る税制改正は、そのような道を益々狭める方向に進んでいます。
今後も高収益が見込める海外への投資は増え続けていくかと思います。その意味では海外財産を相続するケースが増えていくものと思います。一方で国外財産だから、国外居住者だから、日本の相続税制上有利になる、といった一昔前の発想はもはや通用しなくなっていると言えます。

 

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