国際税務ブログ アーカイブ

2020年11月

2020年11月25日

27.  属地主義と属人主義

今回は10月23日に新たに追加された「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」についてご紹介します。
コロナ渦においてリモートワークや国境を越えたオンライン会議等が飛躍的に浸透しています。私の事務所のクライアントでも、海外駐在員が一時帰国中に日本からのリモートワークで海外拠点を何とか運営していける事が分かり、今後は日本から海外事業を管理する方針に切り替える会社が増えています。

現在の日本の税制は、人の居住地に着目して課税ルールを定める「属地主義」を採用しています。そのため、実施する作業は同じでも、本人が物理的にどこにいるか(どこの国にいるか)によって課税地や課税負担が異なってきます。一方、米国など世界の別の国では、本人の所在地ではなく、本人の国籍に応じて課税ルールを定める「属人主義」を採用している国もあります。

今後リモートワークやオンライン会議が益々増えていく中で、国境を越えた労働サービスがどのように課税されるのか、という点については色々と議論が出てくるのではないかと思います。

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問11-2
海外の関連企業から受け入れる従業員を海外で業務に従事させる場合の取扱い〔10月23日追加〕


(質問)
当社(内国法人)は、海外親会社から従業員を受け入れることとなりましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴う移動制限を踏まえて、この従業員は、海外において当社の業務に従事させています。
この従業員に対して当社から支払う給与について、源泉徴収は必要でしょうか。

 

(回答)

〇 居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい(所得税法2条1項3号)、非居住者とは、居住者以外の個人をいいます(所得税法2条1項5号)。
〇 非居住者が日本国内において行う勤務に基因する給与は、国内源泉所得として所得税の課税対象となります(所得税法161条1項12号イ)。また、非居住者に対して国内において国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際に所得税(及び復興特別所得税)の源泉徴収をする必要があります(所得税法212条1項等)。このため、非居住者に対して国外源泉所得の支払をする場合は、源泉徴収の必要はありません。
〇 ご質問について、貴社が海外親会社から受け入れる従業員は、日本国内に住所等を有していないと認められるため、非居住者に該当します。また、非居住者である従業員が海外において行う勤務に基因する給与は、国内源泉所得に該当しませんので所得税の課税対象とならず、貴社がこの従業員に対して支払う給与については、源泉徴収を行う必要はありません。


(参考)役員として受け入れる場合の取扱い


海外親会社の従業員等を貴社の役員として受け入れる場合には、その取扱いが異なる場合がありますので、ご注意ください。
具体的には、非居住者である内国法人の役員がその法人から受ける報酬は、その役員が、その内国法人の使用人として常時勤務を行う場合(海外支店の長等として常時その支店に勤務するような場合)を除き、全て国内源泉所得となります(所得税法161条1項12号イ、所得税法施行令285条1項1号)。
したがって、非居住者である役員に対して支払う報酬については、一定の場合を除き国内源泉所得として所得税の課税対象となり、その支払の際に20.42%の税率により源泉徴収が必要となります(所得税法161条1項12号イ、213条1項1号等)。


(出所:国税庁:国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ:問11-2)
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