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2020年5月

2020年5月20日

 

25. コロナウィルスと短期滞在者免税

 

コロナウィルスの関係で海外駐在員のうち日本に緊急帰国中の方々もいらっしゃるかと思います。コロナウィルスの感染防止のため、外国人の入国制限が多くの国で行われている中で、今後入国制限が長期化した場合の個人の課税関係について相談がありました。

基本的に海外駐在員は、税務上は赴任先国の居住者、日本では非居住者となります。
そのため非居住者が出張等の目的で日本に滞在し、日本で業務を行ったことによる給与を受領した場合には日本の国内源泉所得として扱われ、源泉徴収の対象となります。但し、多くの場合、租税条約による短期滞在者免税の規定が適用され、赴任先国での課税のみで日本での課税は発生しません。

今回相談を受けたのは、現在の入国制限が長期化し、日本での滞在期間が長期化した場合、どのような結果になるのかという趣旨の相談でした。
多くの国の租税条約では、短期滞在者免税の上限を183日に設定しています。そのため仮に日本での滞在日数が183日を超えた場合、短期滞在者免税の措置は無くなり、国内法に基づき日本での源泉徴収(非居住者給与所得)の対象となることが考えられます。つまり赴任国、日本での二重課税が発生する可能性があるという事です。

但し、二重課税となった場合であっても多くの場合には、赴任先国で確定申告を行うことで外国税額控除等の二重課税の回避措置の適用が可能かと考えられます。
コロナウィルスによる各国の入国制限が長期化する場合には、本人の意思に関係なく、帰国したくても帰国できない状況となりますので、政策的な観点からも日本の税務当局から何らかの救済措置が出るかもしれません。何はともあれ、できるだけ早く正常な状態に戻ってくれるのを願うばかりです。