国際税務ブログ アーカイブ

2018年4月

2018年4月2日

18. BEPSとCRSの先にあるもの

早いもので今年も3月15日の確定申告のお祭りが終わり、3月決算の会社にとっては年度末が終了し、本日から新年度に入ります。

国際税務の世界では昨年からBEPSやCRSという横文字が頻繁に出てくるようになりました。こちらも、まさにお祭り騒ぎで、新移転価格税制への対応については昨年・今年と忙しくされた方々も多いのではないかと思います。今年は外国子会社合算税制への対応の準備も本格的にスタートするかと思います。

BEPSやCRSといった新たな制度は、OECDをはじめとする国際的な枠組みの中で共通した制度として導入が進められていますが、導入する国によって姿勢は様々なようです。税収は国益ですので、制度導入により自国の税収が増えるのか減るのか、といった現実的な点が各国の姿勢に現れるのは当然の論理かと思います。

このような中でBEPSやCRSに対して米国が独自の立場で対応をしている点については興味深いところです。米国はBEPSの多国間条約であるBEPS防止措置実施条約にも加入していませんし、CRSにも加入していません。一方で米国居住者に対する海外の金融機関口座の管理を独自に構築しています(FATCA)。

米国の独自の姿勢は、今回の国際税務の話に限った話ではなく、最近ではユネスコやパリ協定からの脱退、鉄鋼製品への制裁関税措置等、共通して自国の利益を優先する立場が目立っています。

国際税務の話に目を向けると、米国がBEPSやCRSで独自の姿勢を取ることで、今後行き場を失った海外マネーが監視の緩い米国に還流していくことが想定されます。これもまた米国の利益につながる政策なのかもしれません。

 

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