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2018年9月

2018年9月7日

21.  退職年金に係る租税条約の適用関係


今回も先日相談のあった案件となります。昨今の人手不足の関係等もあり、定年退職後も雇用関係を維持したまま、海外拠点に赴任、駐在される方が増えているように思います。そのような場合、日本で年金を受給しながら海外に駐在されることになりますので、年金に対する源泉所得税の問題が出てきます。
年金に対する取り決めは各国の租税条約で別途定められているケースが多いのですが、取り決めが異なるケースがありますので赴任先国に応じた個別確認が必要となります。

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【照会要旨】

日本の確定給付企業年金(以下「本件退職年金」といいます。)の受給者が、我が国と租税条約を締結している①ドイツ、②韓国、③カナダにそれぞれ永住することとなりました(受給者はこれらの国の居住者、我が国の非居住者となります。)。
これらの受給者に対して支給する本件退職年金について、源泉徴収をする必要はありますか。

【回答要旨】

① ドイツの居住者については、源泉徴収が必要です。
日独租税協定第17条第1項によれば、退職年金については、その源泉地国においても課税することができるとされていますので、ドイツの居住者に支払う日本に源泉のある本件退職年金については、国内法の規定により、源泉徴収が必要です(所得税法第161条第1項第12号ロ、第212条第1項)。

② 韓国の居住者については、源泉徴収を要しません。
日韓租税条約第18条によれば、退職年金については、一定の場合(注)を除き、その支払を受ける者の居住地国においてのみ課税することができるとされていますので、韓国の居住者に支払う本件退職年金については、源泉徴収を要しません。
ただし、韓国の居住者が租税条約に関する届出を行うことが必要です。
(注)「一定の場合」とは、一方の国又は地方公共団体に対して提供した役務につきその国若しくは地方公共団体又はこれらが拠出した基金から退職年金が支払われる場合をいいます(日韓租税条約第19条第2項)。

③ カナダの居住者については、源泉徴収が必要です。
日加租税条約においては、いわゆる年金条項が設けられていないので、同条約第20条の「その他所得条項」に基づき課税関係を判断することとなります。同条第3項によれば、日本に源泉のある所得については、同条第1項の居住地国課税の特例として、源泉地国においても課税することができるとされていますので、カナダの居住者に支払う日本に源泉のある本件退職年金については、国内法の規定により源泉徴収が必要です(所得税法第161条第1項第12号ロ、第212条第1項)。

 

【関係法令通達】

所得税法第161条第1項第12号ロ、第212条第1項、日独租税協定第17条、日韓租税条約第18条、日加租税条約第20条


注記

平成29年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。

 

出所:国税庁:質疑応答事例
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